
スタバが日本の味を逆輸入 ─ 米国で「ゆずクロワッサン」「抹茶ローフ」が定番になった理由
米スタバのメニューに「日本の味」が増えている
2026年2月、米スターバックスのメニューに大きな変化がありました。
抹茶ドリンクのラインナップが一気に3倍に拡大。さらに「ゆずクロワッサン」「抹茶ストロベリーローフ」といった、日本でおなじみのフレーバーを使ったベーカリーが6種も新たに登場したのです。
日本のスタバファンとしては「え、逆輸入?」と驚く話ですが、その背景には抹茶の世界的なブームと、スターバックスの戦略的な転換がありました。
抹茶メニュー、4種類から一気に拡大
米スターバックスで抹茶といえば、長らく「抹茶ラテ」がほぼ唯一の選択肢でした。2023年時点で通年メニューに載っていた抹茶ドリンクはわずか4種類。それが2026年2月、一気にラインナップが3倍に膨れ上がりました。
新たに加わった抹茶ドリンク
| ドリンク名 | 特徴 | 価格(Grande) |
|---|---|---|
| Iced Double Berry Matcha | 抹茶ラテにストロベリーピューレとラズベリークリームフォームを重ねたフルーティーな一杯 | $6.25 |
| Iced Banana Bread Matcha | バナナフォームとブラウンシュガーシロップを合わせた、焼き菓子のような風味 | $6.25 |
| Protein Matcha | たんぱく質を強化した機能性ドリンク | ― |
※価格は2026年2月時点の米国価格。店舗により異なる場合があります。
「Iced Double Berry Matcha」はベリーの酸味と抹茶の苦味の組み合わせ。「Iced Banana Bread Matcha」はバナナブレッドの甘さと抹茶を掛け合わせるという、日本ではあまり見ない大胆な発想です。
ちなみにラズベリーシロップはこの拡大に合わせて通年メニューに昇格。カスタマイズの幅もさらに広がっています。
転換点は「無糖抹茶パウダー」
この流れの起点になったのは、2025年1月に米スターバックスが導入した無糖の抹茶パウダーです。それまで米国の抹茶パウダーには砂糖が含まれており、「甘すぎる」という声が根強くありました。無糖版の登場により、甘さを自分で調整できるようになったことで、抹茶メニューのカスタマイズが一気に花開いたのです。
「グローバルに発想された」ベーカリー6種
抹茶ドリンクの拡大と同じ2026年2月9日、スターバックスは6種類の新作ベーカリーを投入しました。スターバックスはこれらを「globally inspired(グローバルに発想された)」と表現しています。
| 商品名 | 発想元 | 概要 | 価格 |
|---|---|---|---|
| Yuzu Citrus Blossom | 日本 | ゆずシトラスクリームを詰めたクロワッサン生地。キャンディードゆずをトッピング | $4.25 |
| Strawberry Matcha Loaf | 日本 | 抹茶ケーキにストロベリーを組み合わせたローフケーキ(シーズン限定) | $4.25 |
| Dubai Chocolate Bite | 中東 | チョコレートショートブレッドにカタイフィ入りピスタチオクリーム | $3.25 |
| Chocolate Pistachio Loaf | 欧州 | チョコレートとピスタチオのマーブルケーキ(シーズン限定) | $4.25 |
| Cookie Croissant Swirl | 欧州 | クッキー生地とクロワッサンを融合させたペストリー | $4.25 |
| Berry Blondie | 米国 | ブロンディ生地にベリーを練り込んだバー | $3.75 |
6種のうち2種が明確に日本のフレーバーをベースにしています。
「ゆずクロワッサン」の評価は?
米国メディアのレビューでは評価が分かれています。Tasting Tableは「ゆずの風味がクロワッサンの中心部に集中していて、全体には行き渡っていない」と指摘。一方で「レモンとオレンジの中間のような柑橘感があり、パン生地との相性はいい」という肯定的な声もあります。
日本人から見れば「ゆず」のニュアンスは繊細すぎて伝わりにくいのかもしれません。しかし、スターバックスが「ゆず」をグローバルメニューに載せたこと自体に意味があります。
一番人気は「ピスタチオチョコレートローフ」
ベーカリー6種の中で米メディアの評価がもっとも高かったのは、実は日本発想ではない「Chocolate Pistachio Loaf」でした。「ここ数年のスタバベーカリーで最高傑作」(Food Republic)との声も。しっとりしたマーブルケーキに、ピスタチオのナッツ感とチョコレートの甘さが溶け合う仕上がりです。
なぜ今、抹茶なのか
スターバックスが抹茶に注力する背景には、世界的な市場の成長があります。
| 指標 | データ |
|---|---|
| 抹茶メニュー項目の成長 | 前年比 +30%(2025→2026、飲食業界全体) |
| 抹茶に関するSNS投稿数 | 前年比 +107% |
| 韓国スタバの抹茶ラテ売上 | 前年比 +30%以上 |
SNSでの抹茶関連の投稿は前年比で2倍以上に急増。TikTokやInstagramでは鮮やかなグリーンの抹茶ラテが映えるコンテンツとして定着しています。スターバックスにとって、抹茶は単なるフレーバーの一つではなく、ブランド戦略の柱になりつつあるのです。
「逆輸入」は双方向に起きている
興味深いのは、この現象が一方通行ではない点です。
日本のスターバックスでも、2026年3月に韓国発の「シュークリーム フラペチーノ」が日本初上陸。同じく韓国で50万杯を突破した「Sweet Milk Coffee」は、日本では「スイートミルクラテ」として展開されています。
つまり、スターバックスのメニュー開発は国境を越えた双方向の影響関係の上に成り立っているのです。中国事業の合弁解消のように、各国での事業展開の形も変化し続けています。
| 方向 | 事例 |
|---|---|
| 日本 → 米国 | 抹茶メニュー拡大、ゆずクロワッサン、抹茶ストロベリーローフ |
| 韓国 → 日本 | シュークリーム フラペチーノ、スイートミルクラテ |
| 米国 → 日本 | 今後の注目: Energy Refreshers、ウベ&ココナッツ系ドリンク |
日本のスタバファンにとっての意味
「海外のスタバに日本の味がある」と聞くと、ちょっと嬉しくなります。でも同時に考えさせられることもあります。
米国で「ゆず」が話題になっているなら、日本のスタバでゆずを使ったドリンクが出てもおかしくない。韓国の人気ドリンクが日本に来るなら、日本で生まれたメニューが他の国に渡ることもあるはず。
スターバックスは世界に約40,000店舗を展開するグローバルチェーンですが、各国の店舗は単に本社のメニューを提供しているだけではありません。それぞれの土地で育まれたフレーバーが、国境を越えて別の土地のメニューに影響を与えている。
次にスタバで抹茶ラテを注文するとき、地球の反対側でも同じグリーンの一杯が誰かの日常に溶け込んでいることを思い浮かべてみるのも、悪くないかもしれません。


