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スタバ中国事業の大転換 ─ 8,000店舗から2万店舗へ、日本のスタバはどうなる?
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スタバ中国事業の大転換 ─ 8,000店舗から2万店舗へ、日本のスタバはどうなる?

Ryomaby Ryoma||9 min read

4月末、中国スタバに歴史的な転換が起きる

2026年4月下旬、スターバックスの歴史で最大級の出来事が起きようとしています。

中国国内で展開する約8,000店舗の経営権の60%を、中国の投資会社Boyu Capital(博裕資本)に売却するのです。取引額は約40億ドル(約6,200億円)。クローズは規制当局の承認を経て、4月末の見込みです。

日本でスタバに通う私たちにとって、この話は遠い国の出来事に感じるかもしれません。でも、1971年シアトルで始まり世界約40,000店舗に成長したスターバックスのグローバル戦略が変われば、巡り巡って日本のスタバにも影響が及ぶ可能性はあります。

何が起きているのか、そしてなぜ起きているのかを整理してみました。

ディールの全体像

項目内容
発表日2025年11月3日
Boyu Capitalの持分最大60%
スターバックスの持分40%を維持
取引額約40億ドル(キャッシュフリー・デットフリーベース)
クローズ予定2026年4月下旬(FY2026 Q2)
ブランド・IPスターバックス本社が引き続き保有
本部上海に継続設置

市場では50〜60億ドルの評価が想定されていましたが、40億ドルでの売却。東洋経済の分析では「大幅な割安水準」と指摘されています。それでもスターバックスがこの条件を受け入れた背景には、後述する中国市場の厳しい現実があります。

ポイントは、スターバックスがブランドと知的財産権を手放していないことです。ロゴも、メニュー開発の基準も、品質管理のガイドラインも、すべて本社が保持したまま。Boyu Capitalには「経営の実務」を委ねるかたちです。

なぜ中国を手放すのか

市場シェアの急落

背景にあるのは、中国コーヒー市場での競争激化です。

指標2019年2024年
スタバの市場シェア34%14%

わずか5年で市場シェアが半分以下に。その主因は、Luckin Coffee(瑞幸珈琲)の急成長です。

Luckin Coffeeという存在

項目Luckin Coffeeスターバックス中国
店舗数(2025年末)31,048店8,011店
ラテの価格帯約200〜330円約660〜880円
モデルテイクアウト・デリバリー中心「サードプレイス」体験重視

Luckin Coffeeはスターバックスの約4倍の店舗数を誇り、価格は半額以下。2026年2月には深圳で3万店舗目をオープンし、初のハイエンド店舗にも進出。スターバックスの高級市場にまで攻め込む姿勢を見せています。

COTTI COFFEE(庫迪珈琲)という新興チェーンも、わずか2年で7,600店超に達しスターバックスを追い抜きました。中国のコーヒー市場は、日本とはまったく異なる激しい価格競争の真っ只中にあるのです。

Brian Niccol CEOの判断

2024年9月に就任したBrian Niccol CEOは、「Back to Starbucks」──スターバックスの原点に立ち返る──を掲げています。

その戦略の柱は明確です。「すべてを同時には立て直せない。まず米国市場を建て直す」。

就任前の6四半期連続で米国の既存店売上が減少していたスターバックスにとって、中国での価格戦争に経営資源を投じ続ける余裕はなかったのです。中国事業を現地パートナーに委ねることで、国際部門の営業利益率を13%から2028年までに20%超へ引き上げる計画を描いています。

KFC・マクドナルドが辿った同じ道

実はスターバックスの決断は、過去に他のグローバルチェーンが辿ったのと同じ道筋です。

ブランド分離時期当時の店舗数現在の店舗数増加率
KFC(Yum China分離)2016年約6,900店16,395店約2.4倍
マクドナルド(金拱門設立)2017年約2,500店7,227店約2.9倍
スターバックス2026年8,011店目標: 15,000〜20,000店

KFCもマクドナルドも、中国進出から約25年で現地パートナーに経営を委ねたあと、店舗数を急拡大させています。スターバックスも中国進出26年目(1999年進出)での決断。タイミングも先例と一致しています。

もっとも、先例がすべてうまくいくとは限りません。2万店舗を実現するには、テイクアウト・デリバリー中心の低価格モデルへの転換が避けられないとの指摘もあります。「ゆったりくつろげるサードプレイス」としてのスタバの魅力が薄れるリスクは、議論の的になっています。

中国コーヒー市場のポテンシャル

それでも投資家が中国市場に注目する理由は、成長余地の大きさにあります。

指標中国日本米国
一人当たり年間コーヒー消費約5杯約350杯約400杯
2024年コーヒー輸入量前年比+32.5%

中国の一人当たりコーヒー消費は年間わずか5杯。日本の70分の1、米国の80分の1です。これが10杯に倍増するだけで、14億人の市場では途方もない需要増になります。

2024年のコーヒー輸入量は前年比32.5%増と急成長中。「コーヒーを飲む習慣そのもの」がまだ広がっている段階で、市場全体のパイが拡大し続けているのです。

日本のスタバは変わるのか

ここが一番気になるポイントだと思います。結論から言えば、日本のスタバに直接的な影響はほぼありません

日本は逆の道を歩んでいる

日本のスターバックスは、中国とはまったく逆の歴史を辿っています。

時期出来事
1995年サザビーリーグとの合弁で日本法人設立
2014年サザビーリーグ全株式を約995億円で取得、完全子会社化
2015年東証上場廃止
現在スターバックス・コーポレーションの完全子会社として運営

中国が「完全子会社 → 合弁(60%売却)」へ移行するのに対し、日本は「合弁 → 完全子会社」へとすでに移行済み。好調な市場をわざわざ手放す理由がないのです。

日本はむしろ恩恵を受ける可能性も

中国事業の運営負担がスターバックス本社から軽減されることで、リソースが他の直営市場──日本を含む──に振り向けられる可能性があります。

FY2026 Q1の決算でも、日本はグローバルの「トップマーケット」として名指しで言及されています。約1,900店舗を展開し、2,000店舗到達も目前。中国とは対照的に、安定した成長を続けている市場です。

メニューへの間接的な影響

一方で、メニュー開発に関しては小さな変化があるかもしれません。

合弁化によって中国スターバックスは、より現地市場に特化したメニュー開発を加速させる見込みです。すでに中国では茶とコーヒーを融合させた商品が売上の30%を占めており、この路線がさらに強まるでしょう。

中国独自のメニューがそのまま日本に来る機会は減るかもしれませんが、「茶×コーヒーのフュージョン」といったコンセプトがアイデアレベルで日本のメニュー開発にインスピレーションを与える可能性は十分にあります。実際、韓国発のシュークリーム フラペチーノが日本で大ヒットしているように、スターバックスのメニューは国境を越えて影響し合っています

グローバルチェーンの面白さ

スターバックスのグローバル展開は、大きく3つのモデルで成り立っています。

モデル対象市場数主な国・地域
完全子会社32カ国日本、米国、英国、カナダなど
合弁28市場中国(2026年〜)、インドなど
ライセンス24地域中東、中南米など

日本は米国と並ぶ「完全子会社」のカテゴリ。ブランド体験の一貫性がもっとも高いモデルです。

中国のJV化は、「すべてを自前でやる」というスターバックスの姿勢が、市場の現実に合わせて柔軟に変化していることを示しています。裏を返せば、好調な市場では直営を維持するという判断の表れでもあります。

中国では価格競争の中で「サードプレイス」の体験が薄れつつあると言われています。ソファに座ってコーヒーを飲みながら本を読んだり、窓際の席でぼんやり外を眺めたり──日本のスタバで当たり前のように楽しめるゆったりした空間は、グローバルで見れば実はとても恵まれた環境なのかもしれません。

次にスタバでコーヒーを飲むとき、同じ緑のロゴの下で、世界中のスタバがそれぞれ異なる道を歩んでいることを思い浮かべてみるのも面白いかもしれません。8,000店舗の中国スタバがこれからどう変わっていくのか。その答えは、数年後にはっきり見えてくるはずです。

Ryoma

筆者について

Ryoma

フリーランスデザイナー。週末はスタバをハシゴしながら、次に何をつくるか考えるのが好きな時間。

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